Tribute to ジミー・バトラー~第14話”NBA選手へ”part 4~

今回は満を持して、ジミー・バトラーの快進撃について語っていきたいと思う。ここまで長い遠回りを続けてきたと思われるが、これもNBA、ひいてはジミー・バトラーという選手の解像度を上げていくための作業だったと考えていただきたい。ここまでの連載を追ってくれた諸兄姉であれば、バトラーが果たした偉業がどれだけ素晴らしいものなのか、より深く理解していただけることだろう。

■ジミーバトラーの快進撃


まずはバトラーがどのような活躍をしたのか、分かりやすい数字を提示しようと思う。
2011年のデビューから2014年までについては過去記事でも触れているのでここでは割愛する。ここでは景気よく2014年、バトラーの躍進が始まった年から語り始めよう。まずは2014~2015シーズンの10月から11月にかけて、試合平均22得点、シュート率50パーセント近くという記録を残し、イースタンカンファレンスの月間MVPを獲得しているのだ。NBAの歴代フィールド・ゴール・ランキングで一位を誇っているカリーム・アブドゥル=ジャバーの記録が55.9パーセントであることを考えると、それがどれだけ凄まじい数字が理解できるだろう。当然、バトラーは2015年の2月24日に開催されたオールスターゲームに初出場を果たしている。ちなみにNBAのオールスターゲームとは、NBAで毎年開催される東西対抗のゲームで、イースタンカンファレンスとウェスタンカンファレンスから、それぞれファン投票により選ばれた選手、そしてヘッドコーチの推薦により選ばれた選手で行われるエキシビションゲームだ。しかもこのシーズンでバトラーは平均20得点という、エース級の活躍を見せており、彼がリーグ屈指のディフェンダーであることを踏まえると、それがどれだけの偉業がわかるだろう。このシーズンで彼は当然、NBA最成長選手賞を手にしている。しかしこのオールスターの出場とNBA最成長選手賞はバトラーの快進撃の序章にすぎないのである。


続く2015~2016シーズンでは5年間で9000万ドルという脅威のマックス契約をブルズと結んでのスタートを切り、その契約額に見合う――いや、もしかしたらそれ以上の活躍を見せた。12月18日の対デトロイト・ピストンズ戦で43得点を記録、さらに1月の対トロント・ラプターズ戦では、40得点を第3クォーター以降にたたき出し、2月のミルウォーキー・バックス戦ではかのマイケル・ジョーダンすらをも上回るパフォーマンスを披露、そして2月14日に行われた対フィラデルフィア・セブンティシクサーズ戦では、バトラー至上最高の53得点を記録しているのである。当然のようにバトラーはこのシーズンでもオールスター行きの切符を手にしている。翌年、2017年には、NBAドラフトでミネソタ・ティンバーウルブズへの移籍が決定。2016年にティンバーウルブズの球団社長兼ヘッドコーチに就任していたトム・シボドーと再開を果たし、バトラーのNBA人生における新たな一歩となった。移籍後の彼も、その勢いは留まる事を知らず、12月27日の対デンバーナゲッツ戦では39得点を記録している。また翌年のオールスターゲームへの出場も決定していたのだが、こちらは休養のために出場することができなかった。さらに続く23日のヒューストンロケッツ戦では負傷のために途中退場を余儀なくされてしまっている。精密検査の結果、膝の半月板の損傷が判明し、一ヶ月半の長期休養を挟んだ。いっときはどうなることかと世間を騒がせたバトラーだったが、4月6日の対ロサンゼルス・レイカーズ戦で復帰を果たし、同試合で18得点を記録しており、完全復活を果たしている。怪我の前後はどうしてもパフォーマンスが落ちたり、不安定になるのが常の中、バトラーの安定性は目を見張るものがある。これもまた彼が人生で乗り越えてきたものの重さを示しているのかもしれない。さて、今年の2018~2019シーズンの開始は0月を予定している。今後ともバトラーの活躍から目を離すことはできないだろう。


ではNBAにおけるバトラーのプレイスタイル、そして立ち位置はどのようなものだろう。それを示すのにもっとも分かりやすいのがNBAオールディフェンシブチームと呼ばれる、ディフェンスにおけるオールスターチームの存在がある。これはシーズンごとに最高のディフェンススキルを発揮した選手へと授与される名誉である。バトラーは現段階で4回も、このオールディフェンシブチームを授与されている。バトラーが粘り強くしつこいディフェンスに秀でた選手であることは再三述べた通りだが、そんな彼のプレイスタイルの変化を如実に表しているのが、2014~2015シーズンにおけるNBA最成長選手賞の授与だろう。この賞は文字通り、前年度と今年度の成績を比較し、最も成長したと考えられる選手に贈られる賞であり、アメリカとカナダのスポーツ記者、そして放送関係者らの投票によって選出されるものだ。それまでディフェンス一辺倒だったバトラーがオフェンスにまで手を伸ばし始めたのである。彼のオフェンスには『相手からファールを貰い、フリースローで得点する』という分かりやすい特徴がある。当然、ファールは貰おうと思って貰えるものではない。そこには相応の技術が必要なわけだが、もとからディフェンスを得意とするバトラーからしてみれば、相手に体を接触させることは、相手を抜き去ってしまうことよりも簡単だったに違いない。さらに彼の出場時間や走行距離は規格外で、だれよりもスタミナに秀でた選手であることで有名だ。そんなバトラーに尽きっきりになる相手選手は同等のスタミナを強要されるわけで、その疲労からファールに手を出してしまうというのは想像に難くない。現時点でのバトラーの弱点らしい弱点は外角シュートの安定性に欠けることだが、それを補ってあまりある実力と魅力を、彼は兼ね備えているのである。
では今後のジミー・バトラーはどうなっていきだろうか。NBAの選手はおおよそ30歳で能力のピークを迎え、そこから先は下り坂になると言われている。そのため30前後で引退を考え出す選手が増え、30代後半になると、引退してくる選手が増え出すのが現状である。ジミーは現在28歳で、今年のシーズン開始直前に29歳になる。来年には魔の30歳が待ち受けていることになる。だがこれまでの波瀾万丈な人生を乗り越えてきた精神的なタフさを持っているバトラーなら、老いというだれもが迎える困難程度、難なく乗り越えてくれるという安心感がある。なにより彼の能力は決して華々しいものではない。縁の下の力持ちと言うべき基礎能力が成せる、泥臭くも素晴らしいパフォーマンスなのだ。バトラーならばたとえ体力が衰えようと、それをカバーする新しい手段を見つけだしてくれると筆者は確信している。ぜひともバトラーには今後のNBAを縁の下で支える立役者になって貰いたい。


さて早いものでこのジミー・バトラーの連載も次で最後になってしまう。次の記事は過去の総括したものになるだろう。これまでの記事を振り返りつつ、穴があれば補強し、より多く語るべき場所があればつけ加えてゆくような形になると思われる。

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